今回からは、ジブリ映画4作品から考える環境・社会問題を紹介します。
なお、今回からの4回は著作品の関係上、映画の写真を使うことができません。
文章を読んで気になった方は、作品をご覧ください。
1作品目は「崖の上のポニョ」です。
「崖の上のポニョ」には、実は環境問題や社会問題をテーマにした、さまざまなメッセージが隠されています!
今回は、それを紹介していきたいと思います。
「崖の上のポニョ」ってどんな話?
「海辺の小さな町で暮らす少年宗介と、海からやって来たさかなの子ポニョが出会い、いろいろな経験を通して絆を深めていく」という子どもでもわかりやすい内容になっています。
子どもでも親しみを持って観ることのできる「崖の上のポニョ」ですが、いくつかの環境問題・社会問題が取り上げられていて、
①海洋ゴミ問題
②地球温暖化による海抜上昇
③少子高齢化
などが挙げられています。
では、これらの問題をひとつひとつ考えていきましょう。
①海洋ゴミ問題
「海洋ゴミ問題を表しているのではないか」と考えられるシーンは、ポニョと宗介の出会いのシーンです。
ポニョは、海に捨てられていた空きビンに体がはまってしまい、抜けられなくなってしまいます。それを宗介が助けることで、2人は出会うことになります。
現実で起きている海洋ゴミ問題にはどんなものがあるかをいくつか紹介していきます。
・マイクロプラスチック
マイクロプラスチックとは、大きさが5mm以下の小さなプラスチック片のことで、これが海に捨てられることが問題視されています。
マイクロプラスチックには、元から製造段階で危険な物質が含まれているのですが、海に捨てられることで、スポンジのように海の中にある汚染物質を吸収してしまいます。
これらの危険物質のかたまりを、魚や鳥などの動物が誤って食べてしまうことで、それらの動物を食べた人間の体内に帰って来るのです…。

・ゴーストネット
海に捨てられた漁網のことで、これらはたくさんの海洋生物を傷つけています。体に絡まり、身動きが取りづらくなり、酷い場合は、首に絡まり窒息してしまうこともあるそうです。
②海抜上昇
「海抜上昇を表している」とされるシーンは、物語の中盤、嵐による大洪水で町全体が水没してしまうシーンです。町の人たちは、今まで通りの生活は送れなくなってしまいます。
現実に起きている海抜上昇による問題を考えてみましょう
・ツバル

ツバルでは、海抜上昇により水没してしまう陸地が年々増えており、ニュージーランドに移住する住民もいるそうです。
しかし、日本だって他人事ではいられません!
日本にも、ツバルのように海抜の低い地域がいくつかあり、「海抜ゼロメートル地帯」と呼ばれます。
具体的な例として、大阪平野、関東平野や九十九里浜などが挙げられます。
③少子高齢化問題
「少子高齢化問題を表している」とされるシーンはいくつかあり、
・宗介の父が単身赴任で、宗介の母であるリサはひとりっ子の宗介を一人で育てているという今風な家族形態であること。
・リサの勤務先は老人ホームで、宗介がそこのおばあさんたちと交流するシーンが多いこと。
などが挙げられます。
テレビなどを見ていると、少子高齢化問題が深刻だという話をよく耳にすると思います。
しかし、みなさんは少子高齢化が進むと何が起こるか知ってますか?
・年金・医療・介護などの社会保障負担が増える
・労働力が減るので、生産力が下がる
・人口の減少により、道路・空港・港湾などに多少ゆとりが生まれるが、一人当たりの維持管理、更新投資の負担が大きくなる
などと、社会のさまざまな場面で変化が生じることになります。

このように「崖の上のポニョ」は、子どもでもわかるような物語の中に、いくつかの考えさせられる環境問題・社会問題を想起させるシーンが含まれた作品になっているのです!
「少年と少女、愛と責任、海と生命、これ等初源に 属するものをためらわずに描いて、神経症と不安の 時代に立ち向かおうというものである」
この言葉は、宮崎駿監督が「崖の上のポニョ」に込めたメッセージです!
この言葉を発表者なりの解釈で、言い換えさせてもらうと
「現代社会には様々な問題が溢れかえっていて、それらを皆悲観的に捉えている。だけどそんな神経症で不安な時代だからこそ、力強く生きていこう!」
実際に、作中のこれまで挙げた環境・社会問題を連想させるシーンでも
海洋ゴミ問題→ ポニョとの出会い
海抜上昇 → ポニョと宗介の大冒険
少子高齢化問題→ 宗介とリサとの信頼と愛、父へのリスペクト、老人ホームでのあたたかい交流
とポジティブに力強く描かれていて、どれも「人と人のつながりの温かさ」を感じ取れる重要なシーンです。
さいごに
現代は様々な問題を抱えており、その問題に向き合うことはもちろん大切です!
しかし、そんな中でも「人と人とのつながりから生まれる温かさ」を大切にして、生きていくこともまた重要なことではないでしょうか?