今回もジブリ映画から考える環境問題・社会問題をお伝えします。
3作品目は「風の谷のナウシカ」です。
はじめに
1984年に公開された映画「風の谷のナウシカ」。テレビでも何回も放映され、この映画を見たことがある人は多いでしょう。
この作品には、原作となる漫画が存在します。
その原作の内容と共に、現代の環境問題との関連についてお伝えします。
今回は、「技術発展の結果」、「自然との共生」、「対話の重要性」の3つのテーマについて触れています。
①技術発展の結果
ナウシカの物語の舞台は、産業革命から2000年後の世界となります。
産業革命から1000年を経た時、極限まで発達した科学技術によって「巨神兵」が作られ、それによる戦争で、世界が焼き尽くされ、産業文明が崩壊させられました。
ナウシカたちの時代は、ここからさらに1000年後の世界です。
世界のほとんどが「腐海」という毒を吐き出す樹海に覆われ、残された清浄な領土を奪い合う戦争にナウシカは巻き込まれます。
物語の時間軸に産業革命が存在していたり、ユーラシア大陸という現実と同名の地名が扱われたりと、「風の谷のナウシカ」はただのファンタジーではなく、未来の現実世界を描いていると見ることができます。
作品が公開された当時とは異なり、「AI」にまつわるニュースなどが当たり前のように報道される現代では、巨神兵のように、汚された世界をリセットするような存在も、どこかリアルに感じることができるのではないでしょうか?
②自然との共生
本作品では、ナウシカと自然のコミュニケーションが多く描かれており、ナウシカにとっては腐海も、腐海に住む生物も全て同じ命であり、愛すべき対象であると考えています。
結果、生き物の心を理解し、テレパシーすらも可能となります。
皆さんは、普段から虫と会話を試みることはありますか?
半分冗談の質問ですが、Yesと答える人はほとんどいないでしょう。
ナウシカの世界でも、ナウシカは変わり者として描かれます。
ただ大切なのは、自分も虫も、地球を構成する同じ生命体であると認識できるかどうかだと思います。
私たち人間は、思考を持ち、個性を理解できるため、どこか他者や自然と切り離された存在だと考えてしまいます。
特に、自然と離れた場所で生活すると自然と一体である意識はより薄れていきます。
結果、だんだんと自然を想う気持ちがうすれ、自己中心的になり、ためらいなく環境を蝕むこととなってしまいます。
「虫に出会ったら、必ず挨拶しよう!」とは言いませんが、自然とのつながりについて今一度考えてみることも重要なのではないでしょうか?
③対話の重要性
ナウシカのストーリーには、背景に戦争が存在します。
腐海によって覆われた世界において、清浄な空気の残る土地は貴重であり、それを奪い合うために多くの命が失われます。
戦争がなくならないのは、「対話」が不可能な状態であるからだと考えることができます。
人にはそれぞれ思惑や正義、欲望があります。
このようなものが今の社会を生み出し、我々の生活を発展させてきました。
正義や欲望はは大抵その人の人生に深く根差しており、自分を正当化させるために、絶対に侵食されまいとするあまり、攻撃的な反応を引き起こします。
皆さんも自分を否定されるようなことを言われたときに、悲しい気持ちになったり、怒りを感じたりすることはあると思います。
また、そのような感情は、意識的に生み出されるものではなく、相手の行動によって反射的に引き起こされます。
これを元に反論や復讐が行われてしまうと、相手の発言の意図を理解する前に、対立を深めてしまう場合があります。
ナウシカの物語の中でも、様々な正義や思惑がぶつかり合い、傷つけあっています。
また、それらが善悪では分けることができないように描かれているのも特徴の一つです。
始めは、「悪」と思うようなキャラクターでも、物語が進む中で、その人の考えが描かれ、どこか共感できるようになっています。
そのようなことは、現実でも同じで、絶対的な指標として「善・悪」を分けることは不可能に感じます。
必要なのは、お互いが何を想い、生きているのか、対話によって知ることであると感じさせられました。
まとめ
ナウシカの物語には正解や答えといったものが描かれておらず、自分自身で考えさせられる内容が多いです。
ぜひ、ナウシカの原作版を手に取り、今の地球の環境について考え、それを他の人と共有して欲しいです。